定義
対立遺伝子排除は、B細胞受容体(BCR)またはT細胞受容体(TCR)遺伝子の一方の対立遺伝子で機能的な遺伝子再構成が成立すると、もう一方の対立遺伝子や追加の遺伝子断片の再構成を抑え、一細胞の抗原受容体特異性を原則一種類へ限定する仕組みである。受容体編集は、未熟B細胞が自己抗原へ強く反応した際にRAG1/2を再発現し、主に免疫グロブリン軽鎖遺伝子を再構成して自己反応性を修正する中枢性寛容機構である。
イメージ
受容体作成に成功したら製造ラインを止め、一つの細胞が異なる鍵を何本も持たないようにする仕組みと考える。ただし完成した鍵が自己組織へ強く合ってしまった未熟B細胞では、鍵の軽鎖部分を作り直し、自己反応性を失わせる再編集を試みる。
仕組み
B細胞では、免疫グロブリン重鎖遺伝子の再構成が機能的に成立し、プレB細胞受容体(pre-BCR)シグナルが入ると、RAG発現、クロマチンの開放性、細胞周期が変化して、もう一方の重鎖対立遺伝子の再構成が抑制される。その後、κ鎖、必要に応じてλ鎖の再構成が進み、細胞表面BCRが成立すると追加再構成が止まる。自己抗原へ強く結合する未熟B細胞では、骨髄内でRAG1/2が再誘導され、下流のJ遺伝子断片や別の軽鎖遺伝子座を利用して可変領域を作り直す。編集に失敗した細胞はクローン除去またはアネルギーへ進む。TCRにも対立遺伝子排除はみられるが、TCRα鎖では複数回の再構成が可能で、二種類のTCRを発現する細胞が少数存在する。
例
多価自己抗原へ強く反応する未熟B細胞が軽鎖を変更すると、重鎖が同じでも抗原特異性が変わり、自己反応性を失って成熟過程へ戻れる場合がある。受容体編集は、自己反応性クローンを全て廃棄せず、利用可能なB細胞レパートリーへ救済する仕組みでもある。