定義
足場依存性とは、多くの非造血細胞が増殖、生存、極性維持のために、適切な細胞外基質へのインテグリン接着を必要とする性質である。アノイキスは、この接着が失われたときに誘導されるアポトーシスであり、剥離した細胞が本来とは異なる場所で生存・増殖するのを防ぐ組織恒常性機構である。
イメージ
細胞にとって基質は単なる床ではなく、ここに存在してよいことを示す身分証のような役割を持つ。基質へ接着している間は生存シグナルが入り、剥がれるとそのシグナルが失われて細胞死の仕組みが作動する。転移細胞はこの安全装置を回避して血流中や異所で生き残る。
仕組み
インテグリンがフィブロネクチン、ラミニン、コラーゲンなどへ結合すると、FAK–Src、PI3K–Akt、MAPK、Rho GTPaseなどが活性化し、BCL-2ファミリーの均衡、代謝、細胞骨格、細胞周期進行を支える。接着が失われるとFAK–Aktシグナルが低下し、BIMやBMFなどのBH3-onlyタンパク質が活性化して、ミトコンドリア外膜透過性亢進とカスパーゼ活性化へ進む。細胞極性の喪失や、浮遊細胞塊内部の栄養不足も細胞ストレスを加える。腫瘍細胞では、増殖因子受容体の自律活性化、インテグリンの切替え、上皮間葉転換、オートファジー、抗アポトーシスタンパク質、抗酸化・代謝再編、細胞間接着によってアノイキス抵抗性が成立し得る。
例
正常な腺上皮細胞が基底膜から剥離して腺腔へ入ると、アノイキスが誘導され、腔内が細胞で埋まるのを防ぐ。浸潤・転移では、腫瘍細胞が接着分子と生存経路を変え、原発巣からの剥離、血中循環、遠隔組織への再接着までアノイキスを回避する必要がある。