定義
脈波伝播は血液そのものの移動ではなく、動脈壁の圧・径変化が波として進む現象である。波は血管分岐や抵抗変化部位で反射し、進行波と重なって実際の圧波形を形成する。動脈が硬いほど脈波伝播速度は速くなる。
イメージ
長いホースを一度強く押すと、ホース内の水が端まで瞬時に移動しなくても、圧の波は速く伝わる。途中の分岐や細い部分で波が跳ね返り、元の波へ重なる。
仕組み
左室駆出で生じた進行波は大動脈から末梢へ伝わり、分岐、血管径変化、末梢抵抗部位などで反射する。若く柔らかい動脈では伝播が遅く、反射波は主に拡張期へ戻って冠血流を助ける。加齢や動脈硬化で伝播速度が上がると、反射波が収縮後期へ早く戻り、中心収縮期圧と左室後負荷を増やし得る。反射波による脈圧の増強度は増大係数として評価されるが、心拍数、身長、性別、測定部位にも影響される。 脈波伝播速度は血管壁の弾性、壁厚、内径、血圧などに依存し、同じ人でも血圧上昇時には速くなり得る。進行波と反射波の重なり方は中心大動脈と末梢動脈で異なるため、上腕で測った圧波形から中心大動脈圧を単純に読み替えることはできない。
例
上腕血圧が同程度でも、高齢者や動脈硬化が強い人では反射波が早く戻り、中心大動脈収縮期圧が高いことがある。脈波伝播速度は動脈の硬さを評価する指標として用いられる。 反射波が拡張期に戻れば冠動脈灌流を支えるが、収縮期へ早く戻ると左室が駆出中に受ける圧負荷が増える。