定義
生体分子凝縮体とは、タンパク質やRNAが液–液相分離または多価相互作用によって周囲より高濃度に集まった、膜を持たない区画である。核小体、ストレス顆粒、Pボディ、転写関連凝縮体などが代表で、反応物を集める、不要な反応から隔離する、反応の閾値を作るといった役割を持つ。
イメージ
細胞質や核の中に、油滴のような濃い液滴が一時的にできるイメージである。壁はないが、特定の分子は入りやすく、別の分子は入りにくい。必要がなくなれば解体できるため、膜で囲まれた小器官より柔軟な作業場になる。
仕組み
天然変性領域、低複雑性配列、RNA結合領域、反復配列などが多数の弱い相互作用を同時に作ると、分子濃度、塩濃度、温度、pH、リン酸化状態に応じて相分離の閾値を超える。凝縮体内部では分子の局所濃度、拡散速度、反応速度、粘性が周囲と異なる。RNAは凝縮体形成の足場にも緩衝材にもなり、量が少なすぎても多すぎても形成状態が変わる。ATP依存性ヘリカーゼ、シャペロン、翻訳後修飾は形成と解体を調節する。長時間持続した凝縮体は、液体様からゲル状・固体様へ変化し、異常タンパク質凝集へ移行することがある。したがって、可逆性、分子交換の速さ、選択的な分配が重要である。
例
核小体はrRNA転写、加工、リボソーム組立てに必要な分子を膜なしで集める。ストレス顆粒は翻訳が止まったmRNAとRNA結合タンパク質を一時的に保管し、ストレスが解消すると解体される。神経変性に関わる一部のタンパク質は凝縮体内で濃縮され、長く残ると不可逆的な凝集体へ変化しやすい。