定義
Bohr方程式は、生理学的死腔率を「VD/VT = (PACO₂ − PECO₂) / PACO₂」で表す。PACO₂は肺胞CO₂分圧、PECO₂は混合呼気CO₂分圧である。臨床ではPACO₂の代わりにPaCO₂を用いるEnghoff変法が一般的で、解剖学的死腔だけでなく換気血流比不均等やシャントによるガス交換障害も反映する。
イメージ
肺胞から出るガスはCO₂を含むが、気道や血流のない肺胞から出るガスにはCO₂がほとんどない。CO₂を含まないガスが多く混ざるほど、全呼気中のCO₂は薄まる。その薄まり具合から、換気のうち空振りになった割合を逆算する。
仕組み
CO₂産生が定常で、吸気中CO₂を無視できるとする。肺胞から排出されるCO₂量は肺胞換気量とPACO₂の積に比例し、混合呼気では一回換気量とPECO₂の積に比例する。死腔換気量をVD、一回換気量をVTとすると「(VT−VD)×PACO₂ = VT×PECO₂」となり、整理してBohr方程式が得られる。本来のBohr式ではPACO₂を用いるが、肺胞ガスを直接測りにくいため、PaCO₂を代用するEnghoff変法が使われる。PaCO₂は各肺領域の血流加重平均を反映するため、低換気血流比やシャントがあると、Enghoff法は純粋な死腔以上のガス交換障害を含む。容量カプノグラフィーでは呼気CO₂曲線から気道死腔と肺胞相を分けて評価できる。
例
肺塞栓で換気は保たれているが血流が失われた肺胞が増えると、混合呼気CO₂が低下し、VD/VTが上昇する。ARDSでは微小血管閉塞だけでなく、換気血流比不均等とシャントもEnghoff値へ影響するため、高いVD/VTは重症度情報を持つ。