定義
毛細血管リクルートメントとは、安静時に低灌流または間欠灌流であった微小血管領域へ血流を再配分し、機能的な交換面積と赤血球分布を増やす現象である。単に総血流量を増やすだけでなく、組織内の灌流不均一性を減らし、細胞までの拡散距離を短縮して、酸素、グルコース、ホルモンの交換効率を高める。
イメージ
同じ量の水を一本の太い道だけで流すより、細い道を多数使って各家の近くまで届ける方が配達しやすい。組織でも毛細血管網を広く使うことで、酸素が血管から細胞へ移動する距離を短くし、局所的な供給不足を減らせる。
仕組み
細動脈、毛細血管前部、周皮細胞の緊張、内皮由来一酸化窒素、アデノシン、K⁺、CO₂、インスリンなどが微小血管抵抗を変え、赤血球が通る経路を再配分する。毛細血管内の流れは血管径だけでなく、赤血球変形能、血漿分離、血管網の分岐構造にも左右される。灌流毛細血管が増えると交換面積が広がり、平均拡散距離が短くなるため、Fickの拡散法則で示される交換能力が改善する。骨格筋では運動によって総血流と毛細血管灌流範囲が増える。インスリンは大血管血流の変化に先行して、筋微小循環を改善する場合がある。毛細血管希薄化や内皮機能障害があると、総血流が保たれていても分布不均一が残る。
例
運動開始時には筋細動脈が拡張し、より多くの毛細血管へ赤血球が分配され、活動筋線維までの酸素拡散距離が短くなる。インスリン作用では筋微小循環が改善し、インスリン自体とグルコースの組織到達を助ける。慢性高血圧で毛細血管希薄化が進むと、組織抵抗と拡散距離が増える。