定義
細胞遊走は細胞が自らの形態と接着を周期的に変え、基質または組織内を移動する過程である。走化性は、ケモカイン、細菌産物、補体断片などの濃度勾配を検出して、遊走方向を偏らせる現象をいう。発生、免疫、創傷治癒、腫瘍浸潤に共通する。
イメージ
芋虫が前端を伸ばして地面をつかみ、体を引き寄せ、後端を離す動きを繰り返すイメージである。匂いの濃い方向を比較しながら進路を修正するのが走化性である。
仕組み
遊走細胞はRac、Cdc42、Rhoなどの低分子量GTPaseで前後極性を作る。先端ではArp2/3依存性アクチン重合が葉状仮足を押し出し、インテグリンが新たな焦点接着を形成する。ミオシンII収縮が細胞体を前へ引き、後端の接着を解除する。走化性受容体は局所的なPI3K、PIP3、Rac活性を高め、前端を勾配方向へ安定化する。三次元組織では基質分解、核変形、アメーバ様運動なども組み合わされる。方向性は単一時点の濃度ではなく、細胞内での空間比較と時間変化の統合で決まる。
例
急性炎症では好中球がC5a、LTB4、IL-8、細菌由来ペプチドなどの勾配へ向かう。創傷辺縁の上皮細胞や線維芽細胞も遊走して欠損部を覆う。