定義
筋疲労は、必要とされる随意筋力または仕事率を維持できなくなる可逆的な低下をいう。中枢性疲労は、大脳皮質から脊髄運動ニューロンに至る随意運動指令が十分に出せなくなる状態である。末梢性筋疲労は、神経筋接合部、筋細胞膜、興奮収縮連関、筋小胞体Ca²⁺放出、収縮タンパク質、エネルギー代謝など、神経筋接合部以遠の変化によって筋力が低下する状態を指す。
イメージ
同じ「力が出ない」でも、脳から筋へ送る指令が弱くなった場合と、指令は届いていても筋側が十分に反応できない場合がある。実際の運動では両方が同時に進み、運動の強さ、持続時間、環境、病態によって割合が変わる。
仕組み
中枢性疲労には、運動皮質の興奮性、皮質内抑制、脊髄運動ニューロンの応答性、意欲、体温、神経伝達物質、筋からの感覚入力が関与する。III群・IV群筋求心性線維は代謝産物や機械的負荷を検知し、過度の筋障害を防ぐ方向に運動指令を制限する。末梢性疲労では、細胞外K⁺蓄積、Na⁺・K⁺勾配の変化、T管の興奮性低下、筋小胞体からのCa²⁺放出低下、無機リン酸・H⁺・ADPの蓄積、グリコーゲン減少、活性酸素、収縮装置のCa²⁺感受性低下などが筋力を低下させる。最大随意収縮中に運動神経を追加刺激し、さらに筋力が増えるかをみる重畳単収縮法は、随意賦活の不完全さを推定する方法である。誘発筋力、M波、筋電図などを組み合わせて障害部位を評価する。
例
高強度の短時間運動では、無機リン酸蓄積や興奮収縮連関障害など末梢性要因が大きくなりやすい。長時間の持久運動では、筋グリコーゲン低下、体温上昇、筋求心性入力に加え、中枢からの運動指令低下も関与する。重症筋無力症の易疲労性は神経筋伝達障害による病的現象であり、健常者の運動疲労とは分けて考える。