定義
補体制御とは、可溶性または細胞膜結合性の調節タンパク質が、補体カスケードの開始、C3・C5転換酵素の形成と安定化、膜侵襲複合体の形成を制限する仕組みである。病原体表面での防御反応を保ちながら、自己細胞への過剰な補体沈着と組織障害を防ぐ。
イメージ
補体は一度活性化されると急速に増幅するため、各工程に非常停止装置が置かれていると考えるとよい。病原体表面では反応を進め、自己表面では分解・解体を優先することで、強い攻撃力と自己保護を両立している。
仕組み
C1阻害因子はC1r・C1sを抑えて古典経路の開始を制限し、同時に接触系のカリクレインなども制御する。H因子は自己細胞表面のシアル酸やグリコサミノグリカンへ結合し、代替経路C3転換酵素C3bBbからBbを解離させるとともに、I因子がC3bを切断する際の補助因子として働く。CD55はC3・C5転換酵素を不安定化して解離を促し、CD46はI因子によるC3b・C4b分解を助ける。C4結合タンパク質も古典経路・レクチン経路側のC4bを制御する。終末経路ではCD59がC9の重合を阻害し、膜侵襲複合体の完成を防ぐ。ビトロネクチンなどは可溶性終末複合体の膜挿入を抑える。これらの制御が破綻すると、溶血、血管透過性亢進、血栓性微小血管障害、補体介在性炎症が生じ得る。
例
発作性夜間ヘモグロビン尿症では、赤血球表面のCD55・CD59が欠けるため、補体による血管内溶血が起こりやすい。H因子やI因子の異常では、自己表面で代替経路を十分に抑えられず、腎臓を中心に組織障害が生じることがある。