定義
冠血流予備能(CFR)は、最大充血時の冠血流または血流速度を安静時の値で割った比であり、心筋酸素需要が増えたときに冠循環がどれだけ血流を追加できるかを表す。心外膜冠動脈、細動脈、毛細血管床、拡張期灌流圧、安静時代謝の影響を受ける統合指標である。
イメージ
安静時に道路が流れていても、運動時の交通量をどれだけ追加で通せるかが重要である。冠血管は平常時に一定の緊張を保ち、需要が増えると抵抗血管を拡張して血流を数倍へ増やす。狭窄や微小血管機能障害があると、この予備車線が少なくなる。
仕組み
心筋の酸素抽出率は安静時から高いため、酸素需要増加は主に冠血流増加で賄われる。アデノシン、一酸化窒素、KATPチャネル、H⁺、CO₂などが細動脈抵抗を下げ、最大充血時には微小血管抵抗が最小へ近づく。CFRは最大血流を安静時血流で割って求めるため、心外膜冠動脈狭窄によって最大血流が制限されると低下する。びまん性動脈硬化、細動脈リモデリング、内皮機能障害、毛細血管希薄化でも低下する。頻脈、高血圧、貧血などで安静時血流が高い場合も比は低くなる。左冠血流は収縮期の心筋圧迫で抑えられ、主に拡張期に増えるため、大動脈拡張期圧と左室拡張末期圧が有効灌流圧を左右する。
例
同じ程度の心外膜冠動脈狭窄でも、末梢微小血管抵抗、側副血行、安静時需要によってCFRは異なる。明らかな大血管狭窄がなくても、冠微小血管機能障害によって最大血流が増えず、労作時に心筋酸素供給不足が起こり得る。