定義
クレアチン–ホスホクレアチンシャトルは、クレアチンキナーゼ反応「ホスホクレアチン + ADP + H⁺ ⇄ クレアチン + ATP」を利用し、ATP産生部位と消費部位の間で高エネルギーリン酸を移送する仕組みである。筋、心臓、脳などエネルギー需要が急変する組織で、局所のATP/ADP比を保ち、短時間の出力を安定させる。
イメージ
ATPを細胞内の遠くまで大量に運ぶ代わりに、ミトコンドリア近くでクレアチンへ高エネルギーリン酸を渡し、ホスホクレアチンとして消費現場へ運ぶ。現場のクレアチンキナーゼがADPからATPを再生するため、数秒単位の急な運動でもATP濃度が大きく低下しにくい。
仕組み
ミトコンドリア型クレアチンキナーゼは膜間腔で、酸化的リン酸化によって作られたATPを使い、クレアチンをホスホクレアチンへ変える。ホスホクレアチンは細胞質へ拡散し、筋原線維、イオンポンプ、シナプスなどATP消費部位にある細胞質型クレアチンキナーゼが、そのリン酸基をADPへ移してATPを再生する。生じたクレアチンとADPはミトコンドリア側へ戻る。この系は単なるエネルギー緩衝だけでなく、ADPをミトコンドリアへ効率よく伝えて呼吸を促し、局所的なATP/ADP比を保つ。運動開始直後はホスホクレアチン分解が主にATP需要を支え、その後に解糖系と酸化的リン酸化が増える。
例
全力運動を始めた直後は、酸素供給とミトコンドリアのATP産生がすぐに最大化しないため、筋内ホスホクレアチンが急速に減少してATPを再生する。運動後は酸化的リン酸化を使ってホスホクレアチンを再合成するため、その回復速度はミトコンドリア機能の指標として利用されることがある。