定義
臨界酸素供給量とは、組織が酸素抽出率を増やして酸素消費量を維持できる限界の酸素供給量である。酸素供給量が十分な範囲では、酸素消費量は主に代謝需要によって決まり、供給量が多少変化しても保たれる。酸素供給量が臨界点を下回ると抽出予備能が尽き、酸素消費量が供給量とともに低下する供給依存性へ移行する。
イメージ
配送量が少し減っても、組織が血液から酸素をより多く受け取れば消費量を保てる。しかし抽出率をこれ以上上げられなくなると、配送量の減少がそのまま細胞の酸素利用低下につながる。その境目が臨界酸素供給量である。
仕組み
酸素供給量DO₂は心拍出量と動脈血酸素含量の積で表され、酸素消費量VO₂は心拍出量と動静脈酸素含量較差の積で表される。DO₂が低下すると、毛細血管動員、血流再分配、ヘモグロビンからの酸素解離、酸素抽出率上昇によってVO₂が保たれる。臨界点以下ではミトコンドリアへ届く酸素が不足し、好気的ATP産生が制限され、嫌気的解糖、乳酸産生、細胞機能低下が進む。臨界点は臓器、体温、代謝需要、微小循環、ヘモグロビン酸素親和性、敗血症などにより変わる。全身平均のDO₂が保たれていても、微小循環シャントや拡散障害により局所組織が低酸素になることがある。
例
出血により心拍出量とヘモグロビン濃度が低下するとDO₂が減る。初期は混合静脈血酸素飽和度低下と酸素抽出率上昇でVO₂を保つが、重症化するとVO₂も低下し乳酸が増える。敗血症では全身DO₂が高くても、微小循環の不均一性やミトコンドリア機能障害により局所利用障害が生じ得る。