定義
クロスプレゼンテーションは、本来はMHCクラスII提示へ向かう細胞外由来抗原を、樹状細胞などがMHCクラスI分子へ載せてCD8陽性T細胞へ提示する過程である。クロスプライミングは、その抗原提示に共刺激と炎症シグナルが加わり、ナイーブCD8陽性T細胞が増殖して細胞傷害性T細胞へ分化することを指す。この仕組みにより、抗原提示細胞が直接感染していなくても、ウイルス感染細胞や腫瘍細胞に対するCD8陽性T細胞応答を開始できる。
イメージ
樹状細胞が、壊れた感染細胞や腫瘍細胞から回収した証拠品をMHCクラスIの展示台へ載せ、CD8陽性T細胞へ『この特徴を持つ細胞を探して排除せよ』と教育する仕組みである。自分の細胞内で作られたタンパク質だけを提示する通常経路の例外にあたる。
仕組み
クロスプレゼンテーション能を持つ樹状細胞は死細胞断片や抗原をファゴソームへ取り込む。細胞質経路では抗原を細胞質へ移し、プロテアソームで分解したペプチドをTAP依存的に、またはファゴソーム内の積み込み装置を介してMHCクラスIへ載せる。空胞経路ではエンドソーム・リソソーム内のプロテアーゼが抗原を処理し、TAPに依存せずMHCクラスIへ載せる。ナイーブCD8陽性T細胞の活性化にはペプチド–MHCクラスI複合体だけでなく、CD80/86–CD28共刺激、I型インターフェロンやTLRシグナル、CD4陽性T細胞からのCD40刺激が重要である。炎症シグナルが乏しい場合は、活性化ではなく免疫寛容へ向かうこともある。
例
樹状細胞へ直接感染しないウイルスでも、感染した上皮細胞の抗原を樹状細胞が取り込み、クロスプレゼンテーションによってCD8陽性T細胞を活性化できる。腫瘍抗原のクロスプレゼンテーションは、抗腫瘍T細胞応答の開始やがんワクチン設計で重要である。