定義
樹状突起統合とは、時間的・空間的に分布するシナプス入力を、樹状突起の形態、膜抵抗、膜容量、能動的イオンチャネルの性質に基づいて、細胞体や軸索初節へ届く出力へ変換する過程である。逆行性活動電位は、軸索初節で発生した活動電位が細胞体から樹状突起へ逆向きに伝わり、局所Ca²⁺流入やシナプス可塑性を調節する現象をいう。
イメージ
樹状突起は、単なる電線ではなく、枝ごとに小さな計算を行う樹状の回路である。近接した入力や同時に入った入力は加算されやすく、同じ枝に集中すれば局所的な活動電位を起こすこともある。ニューロンが実際に発火したという結果は逆行性活動電位として枝へ戻り、どのシナプスを変化させるかを決める手掛かりになる。
仕組み
受動的な電位伝播は、膜の長さ定数・時定数、枝の太さ、分岐、シナプスの位置によって決まる。遠位で生じた興奮性シナプス後電位は細胞体へ向かう間に減衰し、時間的にも広がる。一方、樹状突起には電位依存性Na⁺・Ca²⁺・K⁺チャネル、HCNチャネル、NMDA受容体などが分布しており、入力が同時に重なるとNMDAスパイク、Ca²⁺スパイク、樹状突起Na⁺スパイクを生じ、単純な線形加算を超える応答となる。抑制性シナプスは膜コンダクタンスを増やして局所電位を短絡し、枝ごとの計算を制御する。軸索初節から戻る活動電位は樹状突起のNa⁺・Ca²⁺チャネルを活性化し、スパイン内Ca²⁺濃度を上げる。シナプス入力と逆行性活動電位の時間差はNMDA受容体のMg²⁺遮断解除やCaMKII活性を変え、スパイク時刻依存性可塑性につながる。
例
遠位樹状突起の複数のスパインが数ミリ秒以内に同時に活性化すると、局所的なNMDAスパイクが起こり、それぞれを別々に刺激した場合の単純な総和より大きな脱分極が細胞体へ届く。シナプス入力の直後に逆行性活動電位が到達すると、スパイン内Ca²⁺上昇が大きくなり、長期増強が誘導されやすい。