定義
動的過膨張は、呼気時間不足または呼気流制限によって、肺が本来の呼気終末容積まで戻る前に次の吸気が始まり、呼吸ごとに空気が捕捉される状態である。このとき呼気終末にも肺胞内圧が気道開口部圧より高く残り、その圧を内因性PEEP(auto-PEEP)という。閉塞性換気障害や人工呼吸中に重要な病態である。
イメージ
息を吐き切る前に次々と空気を入れると、風船が基準より膨らんだままになる。次の吸気を始めるには、まず風船内部に残った陽圧を打ち消さなければならないため、患者は毎回余分な力を使うことになる。
仕組み
気道抵抗の増加、肺弾性反跳の低下、高い一回換気量、高呼吸数、短い呼気時間は、呼気時定数に対して実際の呼気時間を不足させる。呼気流がゼロへ戻る前に次の吸気が始まると、肺胞内圧が陽圧のまま残り、内因性PEEPが形成される。自発呼吸では、吸気流を開始する前に患者が胸腔内圧を内因性PEEP分だけ低下させる必要があり、吸気閾値負荷が増える。過膨張は横隔膜を平坦化して呼吸筋の長さ–張力関係を悪化させ、胸腔内圧上昇によって静脈還流・右室充満・心拍出量を低下させる。人工呼吸では呼気終末ホールドで総PEEPを測定し、設定PEEPとの差から評価する。
例
COPD増悪で頻呼吸になると、呼気時間が短くなって動的過膨張が進む。患者は強く努力しているのに一回換気量が増えず、呼吸筋疲労、血圧低下、人工呼吸器との同調不良を伴うことがある。人工呼吸管理では呼吸数や一回換気量を抑え、吸気流量を上げて呼気時間を確保する。