定義
異栄養性石灰化は、血清Ca²⁺とリン濃度が概ね正常でも、壊死、変性、老化組織を核としてリン酸カルシウムが局所沈着する現象である。転移性石灰化は、高Ca²⁺血症、高リン血症、カルシウム・リン積の上昇など全身性ミネラル代謝異常により、比較的正常な組織へ広く石灰が沈着する現象である。
イメージ
異栄養性石灰化は『傷んだ場所が結晶の種になる』局所問題、転移性石灰化は『血液中の材料濃度が高すぎて各所へ析出する』全身問題と考える。見た目が同じ石灰でも、血液検査と沈着背景が異なる。
仕組み
異栄養性石灰化では、死細胞の膜小胞、ミトコンドリア、リン脂質、変性タンパク質がリン酸を濃縮し、結晶形成の核となる。局所アルカリホスファターゼ活性、細胞外基質タンパク質、石灰化阻害因子の低下も影響する。転移性石灰化では、副甲状腺ホルモン過剰、骨破壊、ビタミンD過剰、腎不全によるリン貯留などでCa²⁺・リンの均衡が崩れ、胃粘膜、腎臓、肺、血管などへ沈着しやすくなる。血管石灰化では血管平滑筋細胞が骨芽細胞様に分化する能動的過程も関与し、単なる受動的沈殿ではない。
例
古い結核病巣、粥状硬化巣、壊死腫瘍、変性心臓弁の石灰化は異栄養性の代表であり、血清Ca²⁺が正常でも起こる。慢性腎不全による高リン血症と二次性副甲状腺機能亢進では、血管や軟部組織へ転移性石灰化が生じ得る。