定義
浮腫形成を遅らせる組織安全因子とは、毛細血管濾過が増えても直ちに大量の浮腫へ進まないように働く防御機構である。少量の組織液増加による間質静水圧上昇、リンパ流増加、間質タンパク質濃度低下が、正味の濾過圧を減らし、余剰水分を回収する。
イメージ
水漏れが少し増えたとき、床が膨らんで逆圧を作り、排水ポンプが速く動き、床に残るタンパク質を洗い流して水を引き込む力を弱めると考える。三つの防御を超えると、それまで少なかった水分増加が急に目立つ浮腫へ変わる。
仕組み
正常な皮下組織では、プロテオグリカンを含む細胞外基質が自由水を少なく保っている。少量の組織液が増えると間質圧は負圧から0へ近づき、毛細血管から間質への圧差が小さくなって追加濾過を抑える。リンパ管は間質圧上昇と組織運動によって流量を増やし、水分とタンパク質を静脈へ戻す。濾過量が増えると間質タンパク質が希釈され、リンパへ洗い流されるため間質膠質浸透圧が低下し、濾過を抑える方向へ働く。これらが安全余裕を作るが、細胞外基質が自由水を大量に含む状態へ移ると組織コンプライアンスが高まり、間質圧があまり上がらないまま多量の水分を蓄えられる。リンパ管閉塞、低タンパク血症、炎症では安全因子が弱くなる。
例
静脈圧が軽度上昇しても、初期にはリンパ流増加と間質圧上昇によって目立つ浮腫が起こらない。圧上昇が持続して安全余裕を超えると、圧痕性浮腫が急に増える。炎症ではKf増加と反射係数低下に加えて細胞外基質も障害され、安全因子そのものが弱くなる。