定義
エピトープスプレッディングは、免疫応答が時間とともに最初の抗原決定基から追加の抗原決定基へ拡大する現象である。同じ抗原分子内の別部位へ広がる分子内スプレッディングと、同じ組織や分子複合体にある別の抗原へ広がる分子間スプレッディングがある。慢性感染、自己免疫疾患、抗腫瘍免疫などでみられる。
イメージ
最初は一つの部品だけを標的としていた免疫反応でも、攻撃によって組織が壊れると、普段は見えにくい別の部品が露出する。免疫系がそれらを新しい標的として学習すると、最初の引き金が消えた後も攻撃が続き得る。
仕組み
初期のT細胞・B細胞応答が組織傷害を起こすと、自己抗原の放出、翻訳後修飾、隠れていた抗原決定基の露出が増える。炎症下で活性化した抗原提示細胞がこれらを取り込み、未熟リンパ球へ提示することで新しい特異性が生じる。B細胞はB細胞受容体でタンパク質複合体を取り込み、同一分子内の別ペプチドをT細胞へ提示できるため、連結認識が標的拡大を促す。胚中心での体細胞超変異により抗体の反応範囲が変化することもある。分子間スプレッディングでは、同じ複合体や同じ組織区画にある抗原が一緒に放出・提示される。抗原が持続し、死細胞除去が不十分で、傷害が繰り返されると自己維持的な循環が形成される。一方、抗腫瘍免疫では標的拡大が治療上有利に働くことがある。
例
多発性硬化症の実験モデルでは、ある髄鞘抗原決定基に対するT細胞反応が脱髄を起こし、その後、別の髄鞘タンパク質へ反応が広がる。がんワクチン後に、ワクチンへ含まれていない腫瘍抗原に対する免疫応答が生じる場合は、有益なエピトープスプレッディングとなり得る。