定義
小胞体関連分解(ERAD)は、分泌タンパク質や膜タンパク質のうち、小胞体で正しい立体構造を獲得できない分子を認識し、小胞体膜を越えて細胞質側へ逆輸送した後、ユビキチン–プロテアソーム系で分解する仕組みである。小胞体内へのタンパク質流入量と折りたたみ能力の均衡を保ち、異常タンパク質の凝集や誤ったシグナル伝達を防ぐ。
イメージ
小胞体をタンパク質の組立工場とすると、ERADは検品で不合格になった製品を工場内へ放置せず、専用の出口から外へ引き出し、廃棄標識を付けて破砕装置へ送る仕組みである。修復可能な分子はシャペロンが再び折りたたみ、長く異常が続く分子だけが分解へ回される。
仕組み
新生タンパク質はBiP、カルネキシン、カルレティキュリン、タンパク質ジスルフィドイソメラーゼなどの助けを受けて折りたたまれる。疎水性領域の露出、異常なジスルフィド結合、糖鎖処理の遅延が続くと、レクチンやシャペロンによってERADの基質として認識される。異常部位が小胞体腔内、膜内、細胞質側のどこにあるかに応じて異なる複合体が働く。HRD1などのE3ユビキチンリガーゼと逆輸送装置が基質を膜越しに移し、p97/VCP ATPaseが細胞質側へ引き抜く。基質にはポリユビキチン鎖が付加され、必要に応じて糖鎖が外された後、26Sプロテアソームで分解される。小胞体ストレスが増えると、折りたたみ不全タンパク質応答がシャペロンとERAD関連分子の発現を増やす。
例
多数の膜受容体を合成する細胞では、組立てに失敗した構成タンパク質をERADで除去しないと、正常な構成タンパク質まで小胞体に滞留する。CFTRの一部変異では、機能を一部保っていても品質管理によって厳しく排除され、細胞膜へ届きにくくなることがある。