定義
小胞体ストレスは、小胞体内に折り畳み不全・未成熟タンパク質が蓄積し、小胞体の処理能力を超えた状態である。細胞は小胞体ストレス応答を起動して、タンパク質流入の抑制、分子シャペロンの増加、小胞体関連分解の促進を行う。オートファジーは、細胞質成分や小器官を隔離膜で包み、リソソームで分解・再利用する仕組みである。
イメージ
小胞体を製品の組立工場、オートファジーを大型廃棄物まで回収できる清掃・再資源化設備と考える。工場内の不良品が増えると生産速度を落とし、修理担当を増やし、修理不能品を搬出する。それでも処理できない大きな塊や傷害小器官は別の回収系で処分する。
仕組み
平常時にはBiPがIRE1、PERK、ATF6などの小胞体膜センサーを抑えている。折り畳み不全タンパク質が増えるとBiPがそちらへ動員され、各センサーが活性化する。PERKはeIF2αをリン酸化して全体の翻訳を一時的に抑え、ATF4を介して適応遺伝子を誘導する。IRE1はXBP1 mRNAを切りつないで、シャペロンや小胞体関連分解に必要な遺伝子発現を高める。ATF6はゴルジ体で切断され、核内で品質管理遺伝子を誘導する。オートファジーではULK1複合体、Beclin 1、LC3などが隔離膜形成を進める。AMPKは促進方向、mTORC1は抑制方向に働く。適応で回復できない強いストレスではCHOPやJNKなどを介して細胞死へ傾く。
例
膵β細胞や形質細胞のように分泌タンパク質を大量に作る細胞では、小胞体の処理負荷が高い。虚血、低酸素、Ca²⁺恒常性の破綻、遺伝性変異による折り畳み異常は小胞体ストレスを生じ、オートファジーと協調した処理が不十分だと細胞障害へ進み得る。