定義
フェロトーシスは、細胞膜の多価不飽和脂肪酸を含むリン脂質に過酸化物が蓄積し、鉄依存性に進行する細胞死である。アポトーシス、ネクロプトーシス、パイロトーシスとは異なる実行機構をもち、グルタチオンペルオキシダーゼ4(GPX4)と還元型グルタチオンが主要な防御系を構成する。
イメージ
細胞膜の脂質へ「さび」が連鎖的に広がる状態を想像するとよい。通常はGPX4とグルタチオンが酸化脂質を処理するが、原料不足や酵素阻害によって処理が追いつかなくなると、膜全体の性質が崩れて細胞が生存できなくなる。
仕組み
シスチン・グルタミン酸交換輸送系(システムxc−)は、細胞外シスチンを取り込み、細胞内でシステインへ還元してグルタチオン合成を支える。GPX4は還元型グルタチオンを利用し、リン脂質ヒドロペルオキシドを還元する。システムxc−阻害、シスチン欠乏、グルタチオン枯渇、GPX4阻害が起こると、この防御が低下する。Fe²⁺はフェントン反応などを介して酸化反応を進める。ACSL4とLPCAT3は酸化されやすい多価不飽和脂肪酸を膜リン脂質へ組み込み、フェロトーシス感受性を高める。細胞はフェリチンへの鉄隔離、FSP1–CoQ₁₀系、GCH1–BH4系などでも脂質酸化を抑える。これらの防御を脂質過酸化が上回ると、膜の透過性や酵素機能が損なわれ、細胞死へ至る。
例
腎尿細管や心筋の虚血再灌流では、遊離鉄増加と抗酸化能低下が重なり、フェロトーシスが組織障害へ関与し得る。腫瘍細胞では脂質組成、鉄代謝、GPX4依存性が異なるため、フェロトーシス誘導への感受性にも差が生じる。