定義
胎児–胎盤単位は、胎盤、胎児副腎、胎児肝がステロイド前駆体を交換し、妊娠維持に必要なプロゲステロンとエストロゲン、特にエストリオールを共同で産生する仕組みである。胎盤はコレステロール側鎖切断酵素とアロマターゼをもつ一方、CYP17A1活性が乏しいため、エストロゲン合成には胎児由来のC19ステロイド前駆体を必要とする。
イメージ
胎盤は大きなホルモン工場だが、すべての工程を行う酵素を持っているわけではない。胎児副腎が材料を作り、胎児肝が一部を加工し、胎盤が最終製品へ仕上げる。母体、胎児、胎盤が一つの生産系として働く。
仕組み
母体LDL由来コレステロールは胎盤へ取り込まれ、StAR、CYP11A1、3β-HSDによってプレグネノロン、プロゲステロンへ変換される。胎盤ではCYP17A1活性が低く、C21ステロイドからC19アンドロゲンを十分に作れない。胎児副腎の胎児帯はDHEA-Sを大量に産生し、胎盤のステロイドスルファターゼで脱硫酸化された後、3β-HSDとアロマターゼによりエストロン・エストラジオールへ変換される。エストリオール産生では、DHEA-Sが胎児肝で16α水酸化されて16α-OH-DHEA-Sとなり、胎盤でエストリオールへ変換される。妊娠後半にはエストロゲン産生が増え、子宮発育、子宮血流、乳腺発達を支える。出生後は胎盤が失われ、胎児副腎の胎児帯も退縮するため、この協働系は急速に解体される。
例
母体血や尿のエストリオール値は、胎児副腎、胎児肝、胎盤の連続した反応に依存するため、古典的には胎児–胎盤機能の指標として用いられた。胎盤ステロイドスルファターゼ欠損ではDHEA-Sからエストロゲンへの変換が低下し、母体エストロゲン値が低くなる。