定義
Fickの第1法則は、拡散流束Jが濃度勾配に逆向きに比例する法則で、1次元では「J = −D·dC/dx」と表す。厚さTの均一な膜を横切る総移動量は、おおむね「移動速度 = D × A × ΔC / T」で、気体では濃度差の代わりに分圧差を用いる。
イメージ
人が混雑した部屋から空いた部屋へ広い扉を通って移る状況を考えるとよい。人数差が大きく、扉が広く、通路が短いほど移動は速い。生体では扉の広さが交換面積、通路の長さが膜厚に相当する。
仕組み
分子の熱運動により、物質は化学ポテンシャルの高い側から低い側へ正味移動する。総移動量は交換面積Aと濃度差または分圧差に比例し、膜厚Tに反比例する。気体の拡散係数Dは一般に溶解度に比例し、分子量の平方根に反比例する。肺では「ガス移動量 ∝ D × A/T × 分圧差」となり、肺拡散能DLは「移動量/平均分圧差」で表す。肺胞隔壁肥厚、交換面積減少、分圧差低下はガス移動を減らす。
例
運動時には肺毛細血管血流が増え、利用される毛細血管と交換面積が増えるため、酸素移動量も増加する。一方、肺胞隔壁が厚くなる病態では、同じ肺胞気酸素分圧でも血液への酸素移動が遅れやすい。