定義
心筋の力–頻度関係とは、刺激頻度の変化に伴って一拍あたりの収縮力が変化する関係である。正常心筋では一定範囲で頻度上昇により収縮力が増す正の階段現象、すなわちBowditch効果を示す。これは、心筋線維長に依存するFrank–Starling機序とは異なる、Ca²⁺処理の頻度依存性適応である。
イメージ
心拍が速くなると一拍の充満時間は短くなるが、各拍で使えるCa²⁺を増やして収縮を強める補償が働く。階段を一段ずつ上るように、同じ筋長でも刺激を重ねると収縮力が増す。
仕組み
刺激頻度が上がると、単位時間あたりのL型Ca²⁺流入が増える。またNa⁺流入増加による細胞内Na⁺上昇は、Na⁺/Ca²⁺交換体からのCa²⁺排出を相対的に減らす。SERCAはホスホランバンによる調節と短い拍動周期の中で筋小胞体Ca²⁺量を増やし、次の拍でリアノジン受容体から放出されるCa²⁺を増加させる。活動電位持続時間、回復特性、筋原線維のCa²⁺感受性も関与する。正常心では収縮力だけでなく弛緩能も改善し、高心拍数でも拡張期を確保する。心不全ではSERCA低下、Na⁺処理異常、リアノジン受容体からの漏出などによって関係が平坦または負となり、頻脈で一拍収縮力が低下することがある。
例
運動時に交感神経刺激で心拍数が上がると、β₁受容体刺激による収縮力増加に加え、力–頻度関係も拍出維持へ寄与する。一定筋長に保った心筋標本で刺激頻度を段階的に上げると、正常組織では収縮張力が増える。