定義
消化管スローウェーブは、胃、小腸、大腸の平滑筋網でみられる自発的・周期的な膜電位変動であり、主にカハール介在細胞がペースメーカー兼伝導網として形成する。スローウェーブ自体が必ず活動電位や収縮を起こすわけではない。波の頂点で平滑筋膜が閾値へ達し、Ca²⁺を運ぶスパイク電位が生じた時に収縮が強くなる。
イメージ
スローウェーブは一回ずつ収縮を直接起こす命令ではなく、『この時刻なら収縮信号を出しやすい』という周期的な窓を作る拍子である。神経やホルモンは膜電位を上下させ、各窓でスパイクが何個出るかを変える。
仕組み
カハール介在細胞では、Ca²⁺活性化Cl⁻チャネルANO1、細胞内Ca²⁺振動、ミトコンドリアと小胞体の相互作用などによってペースメーカー電流が生じる。カハール介在細胞と平滑筋は電気的に結合し、スローウェーブを機能的合胞体へ広げる。固有周波数は消化管部位ごとに異なり、胃では口側から幽門側へ、小腸では近位から遠位へ周波数勾配がある。アセチルコリン、伸展、モチリンなどの興奮性入力は膜を脱分極させ、波の頂点でL型Ca²⁺チャネルを介するスパイクを増やす。一酸化窒素、VIP、交感神経入力は過分極方向へ働く。収縮頻度は原則としてスローウェーブ周波数を超えにくいが、収縮強度はスパイク数とCa²⁺流入量で変わる。
例
胃前庭部ではスローウェーブが伝播性収縮の時間枠を作り、食物の粉砕と幽門方向への移送を支える。カハール介在細胞の数や連結性が低下すると、電気活動の協調が乱れ、胃排出や腸管通過の異常に関与し得る。