定義
グルタチオン酸化還元サイクルは、還元型グルタチオン(GSH)がグルタチオンペルオキシダーゼやグルタチオンS-トランスフェラーゼの基質となって過酸化物や求電子物質を処理し、生成した酸化型グルタチオン(GSSG)をグルタチオンレダクターゼがNADPHを使ってGSHへ戻す仕組みである。細胞質、ミトコンドリア、赤血球で主要な抗酸化緩衝系として働く。
イメージ
GSHを繰り返し使える消火器と考える。活性酸素や反応性化合物へ還元力を渡すと二分子が結合してGSSGになるが、NADPHを使う再充填装置がGSHへ戻す。したがって、GSH量だけでなくNADPHを供給できる能力が防御力を決める。
仕組み
GSHはグルタミン酸、システイン、グリシンから二段階のATP依存反応で合成され、システイン供給とグルタミン酸システインリガーゼが律速となる。グルタチオンペルオキシダーゼは過酸化水素や脂質過酸化物を還元し、セレノシステインを持つGPX4は膜脂質の過酸化を抑える。グルタチオンS-トランスフェラーゼはGSHを薬物代謝物や求電子物質へ抱合し、水溶化と排泄を助ける。GSSGはNADPH依存性グルタチオンレダクターゼによって二分子のGSHへ戻る。赤血球ではペントースリン酸経路が主要なNADPH供給源であり、NADPHが不足するとヘモグロビンや膜タンパク質の酸化障害が増える。
例
赤血球はミトコンドリアを持たないため、ペントースリン酸経路由来のNADPHへ強く依存する。酸化負荷が増えたとき、GSH再生が追いつかなければハインツ小体形成や膜障害が進む。肝細胞では反応性代謝物をGSH抱合によって解毒するが、GSHが枯渇するとタンパク質との共有結合性障害が増える。