定義
高地順化とは、低気圧に伴う吸入酸素分圧低下へ曝露された個体が、数分から数週以上かけて換気、酸塩基平衡、循環、造血、微小循環、細胞代謝を調整し、動脈血酸素化と組織酸素供給を改善する可逆的適応である。世代を超えて形成された遺伝的な高地適応とは区別される。
イメージ
高地では空気中の酸素割合は同じでも気圧が低いため、一呼吸で肺へ入る酸素分子が少ない。身体はまず呼吸を増やし、次に腎臓が呼吸性アルカローシスを補正し、さらに血液の酸素運搬能力と組織の酸素利用を長期的に調節する。
仕組み
気圧低下によって吸入気、肺胞、動脈血の酸素分圧が低下し、頸動脈小体が刺激されて過換気が始まる。PaCO₂低下による呼吸性アルカローシスは初期に換気刺激を抑えるが、数日で腎臓がHCO₃⁻を排泄し、髄液pHも補正されるため、さらに換気を増やせる。交感神経活動と心拍数は初期に上昇し、利尿によって血漿量は減る。HIF–PHD系を介して腎EPO産生が増え、数週で赤血球量が増加する。2,3-BPG増加は末梢での酸素放出を促す一方、肺での酸素結合を弱める。毛細血管密度、一酸化窒素系、ミトコンドリア酵素、筋効率も調節される。肺血管は低酸素で収縮するため、過度に反応すると高地肺水腫へ進み得る。
例
海面から3000 mへ急に移動すると、数時間以内に呼吸数増加と呼吸性アルカローシスが生じる。数日で尿中HCO₃⁻排泄が進み、換気がさらに増える。数週で赤血球量が増加する。海面へ戻ると、多くの変化は徐々に元へ戻る。