定義
免疫特権は、眼前房、中枢神経系の一部環境、精巣、母体–胎児境界などで、移植抗原や炎症刺激に対する免疫反応が通常組織と異なり、局所組織障害が抑えられる性質を指す。免疫細胞が存在しないのではなく、解剖学的障壁、特殊なリンパ流、低いMHC・共刺激分子発現、免疫抑制性因子、制御性細胞誘導が重なって成立する。
イメージ
視力や神経機能のように、炎症で失うと回復しにくい機能を守るため、警備をなくすのではなく、使用できる火力を厳しく制限した特別規則を設けると考える。感染防御を完全に放棄するのではなく、反応の種類と強さを変えている。
仕組み
密着結合を主体とする障壁と、平常時の白血球流入の少なさが、抗原とエフェクター細胞の出入りを制限する。局所細胞はTGF-β、IL-10、α-MSH、レチノイン酸、IDO、PD-L1、Fasリガンドなどを発現し、エフェクターT細胞を抑制し、制御性T細胞を誘導する。補体制御因子と抗酸化系も周辺組織への巻き添え障害を抑える。眼前房へ入った抗原は特殊な抗原提示を通じて全身性寛容に近い反応を誘導することがある。精巣では血液精巣関門とSertoli細胞環境が思春期以降に現れる生殖細胞抗原を隔離する。母体–胎児境界では特徴的なHLA発現と子宮NK細胞が、胎盤形成と免疫寛容を両立させる。
例
角膜は無血管性、比較的低いMHC発現、前房の抑制環境によって、他組織より移植片が受容されやすい条件を持つ。感染、外傷、新生血管形成などで障壁と局所抑制環境が破綻すると、免疫特権が失われ強い炎症が起こり得る。