定義
統合ストレス応答は、異なる細胞ストレスを複数のキナーゼが感知し、共通標的であるeIF2αをリン酸化して翻訳開始を再編する仕組みである。一般的なタンパク質合成を減らして資源を節約する一方、ATF4などのmRNAは選択的に翻訳され、アミノ酸代謝、酸化還元調節、オートファジー、細胞死の制御へつながる。
イメージ
原料不足、ウイルス侵入、組立不良など別々の警報が鳴っても、まず工場全体の生産速度を落とし、修理・補給・防御に必要な説明書だけを優先して読む仕組みと考えるとよい。回復可能なら生産を再開し、ストレスが長引けば細胞死へ切り替わる。
仕組み
GCN2はアミノアシル化されていないtRNA、PKRは二本鎖RNA、PERKは小胞体内の折りたたみ不全、HRIはヘム不足や一部の酸化ストレスを感知し、eIF2αのSer51をリン酸化する。リン酸化eIF2αはeIF2BによるGDP–GTP交換を抑え、翻訳開始に必要な三者複合体を減らして全体の翻訳を低下させる。ATF4 mRNAは上流開放読み枠の配置により、三者複合体が少ない条件で主たる読み枠の翻訳が増える。ATF4はアミノ酸輸送・合成、抗酸化、オートファジー、CHOPなどを誘導する。GADD34–PP1とCReP–PP1がeIF2αを脱リン酸化し、翻訳を再開する。短時間の応答は保護的だが、長く続くとCHOPや酸化ストレスを介してアポトーシスへ傾く。
例
アミノ酸欠乏ではGCN2が活性化し、タンパク質合成を抑えながらアミノ酸輸送体と合成酵素を増やす。ウイルス感染ではPKRが翻訳を抑え、ウイルスタンパク質の産生を制限する。赤芽球ではHRIがヘム供給とグロビン合成を同期させ、遊離グロビンの凝集を防ぐ。