定義
浸潤は腫瘍細胞が基底膜や周囲間質へ入り込む局所的過程、転移は原発巣と連続しない部位に新たな腫瘍巣を形成する過程である。転移成立には、細胞間接着の変化、細胞外基質の分解、遊走、脈管内侵入、循環中での生存、脈管外脱出、遠隔組織への定着と増殖が必要となる。
イメージ
種が元の畑から離れ、川を渡り、別の土地へ到達して根付く過程に似ている。移動できるだけでは転移は成立せず、到達先の環境が増殖を支えられることが必要である。これを種子と土壌仮説で説明する。
仕組み
上皮性腫瘍ではEカドヘリン低下や細胞骨格再編成により細胞間接着が弱まり、MMPなどの酵素が基底膜・間質を分解する。腫瘍細胞はケモカインや増殖因子に反応して遊走し、血管やリンパ管へ侵入する。循環中では血小板に覆われることでずり応力や免疫攻撃から保護される場合がある。遠隔臓器の毛細血管で停止した後、内皮を越えて組織へ出て、生存・血管新生・免疫回避に成功した細胞だけが転移巣を形成する。転移先の選択には血流経路だけでなく、接着分子、ケモカイン受容体、臓器固有の微小環境が関与する。
例
大腸癌は門脈血流を介して肝転移を起こしやすい。乳癌は骨、肺、肝、脳などへ転移し得るが、単に血流量だけでは説明できず、腫瘍細胞と転移先環境の適合性も重要である。