定義
鉄–硫黄クラスターは、鉄と無機硫黄からなる補欠分子族で、2Fe–2Sや4Fe–4Sなどの形で呼吸鎖、TCA回路、DNA代謝、鉄感知に関与する。生合成系は、反応性の高い遊離鉄と硫黄を細胞内へ放置せず、主にミトコンドリア内の足場タンパク質上でクラスターを組み立て、シャペロンと運搬タンパク質を介して標的タンパク質へ挿入する。
イメージ
鉄–硫黄クラスターは電子を受け渡す小さな金属電池のようなものだが、部品を細胞内で自由に混ぜると危険である。専用の組立ラインが鉄と硫黄を足場上で組み、検品してから各酵素へはめ込む。組立てが壊れると、互いに無関係に見える多くの酵素が同時に機能低下する。
仕組み
ミトコンドリアのISC系では、システイン脱硫酵素NFS1がシステインから硫黄を取り出し、ISCU足場タンパク質へ渡す。フラタキシン、フェレドキシン、電子供与体などが鉄供給と還元状態を調節し、初期の2Fe–2Sクラスターを形成する。HSPA9/HSC20シャペロン系がクラスターを受け手タンパク質へ移し、後期因子が4Fe–4Sクラスターへ成熟させる。細胞質や核の鉄–硫黄タンパク質には、ミトコンドリア由来の硫黄含有中間体とCIA系が必要とされる。鉄–硫黄クラスターは、呼吸鎖複合体I〜III、アコニターゼ、コハク酸脱水素酵素、リポ酸合成酵素、DNAヘリカーゼやDNAポリメラーゼなどへ組み込まれる。細胞質アコニターゼはクラスターを失うとIRP1としてRNAへ結合し、鉄代謝を調節する。
例
アコニターゼは4Fe–4Sクラスターを持つとTCA回路酵素として働くが、細胞質型がクラスターを失うとIRP1となり、フェリチンやトランスフェリン受容体mRNAの鉄応答配列へ結合する。生合成障害は、呼吸鎖低下、リポ酸依存酵素障害、DNA維持異常を同時に起こし得る。