定義
乳酸シャトルとは、解糖系で生じたピルビン酸を乳酸へ変えて細胞質NAD⁺を再生し、乳酸を別の細胞や臓器へ運び、酸化燃料または糖新生基質として利用する考え方である。乳酸は酸素不足時の単なる廃棄物ではなく、酸化還元状態、エネルギー移送、細胞間情報伝達に関与する循環代謝物である。
イメージ
解糖系を続けるには、NADHをNAD⁺へ戻す必要がある。ピルビン酸へ電子を渡して乳酸にすると、細胞はNAD⁺を再生して解糖を続けられる。乳酸は血流や細胞間を移動し、酸素とミトコンドリア機能に余裕のある場所で再びピルビン酸へ戻され、燃料として利用される。
仕組み
乳酸脱水素酵素は「ピルビン酸 + NADH + H⁺ ⇄ 乳酸 + NAD⁺」を触媒し、反応方向は基質濃度と細胞質の酸化還元状態で決まる。MCT1、MCT4などは乳酸とH⁺を共輸送し、産生細胞から利用細胞へ乳酸の流れを作る。速筋、赤血球、活性化免疫細胞などは乳酸を放出しやすく、心筋、遅筋、肝臓、脳の一部は取り込んで利用できる。肝臓ではコリ回路によって乳酸からグルコースを再合成し、心筋や骨格筋ではピルビン酸へ戻してTCA回路で酸化する。血中乳酸濃度は産生と除去の差で決まり、酸素供給だけでなく、解糖速度、カテコールアミン刺激、肝・腎での除去能に左右される。
例
運動中の速筋から放出された乳酸は、隣接する酸化型筋線維や心筋で燃料として使われ、残りは肝臓で糖新生へ回る。脳では、アストロサイトが産生した乳酸を神経細胞が利用するという仮説があり、神経活動とエネルギー供給の連携を説明する。