定義
マンノース6リン酸による標的化とは、粗面小胞体で合成された可溶性リソソーム酵素をゴルジ装置で識別し、糖鎖のマンノース残基へリン酸標識を付加して、マンノース6リン酸受容体を介しエンドソームへ運ぶ仕組みである。分泌経路へ流れやすい酵素をリソソームへ集中させ、酸性環境での細胞内消化を成立させる。
イメージ
多くの分泌タンパク質が同じ配送経路を通る中で、リソソーム酵素だけに専用の郵便番号を付ける仕組みと考えるとよい。ゴルジ装置でマンノース6リン酸という宛先が読み取られ、輸送小胞へ積み込まれ、酸性のエンドソームで荷物を降ろした後、受容体は再利用される。
仕組み
シスゴルジでは、GlcNAc-1-ホスホトランスフェラーゼがリソソーム酵素の立体構造を認識し、N結合型糖鎖のマンノースへGlcNAcリン酸を転移する。続いて標識の覆いが外され、マンノース6リン酸が露出する。トランスゴルジ網では、陽イオン依存性または陽イオン非依存性マンノース6リン酸受容体が標識酵素へ結合し、AP-1、GGA、クラスリンを介して輸送小胞へ濃縮する。エンドソームの低pHで酵素と受容体が解離し、受容体はゴルジ装置や形質膜へ回収される。酵素は切断などの成熟過程を経てリソソームへ送られる。少量が細胞外へ分泌されても、形質膜上の受容体から再取り込みされるため、周囲の細胞へ酵素を補える場合がある。
例
ある細胞が正常なリソソーム酵素を細胞外へ少量分泌すると、隣接細胞がマンノース6リン酸受容体を介して取り込み、自身のリソソームへ補充できる。この細胞間補完は、一部のリソソーム病に対する酵素補充療法や造血細胞移植の理論的基盤となる。