定義
MAPK–ERK経路は、主に受容体型チロシンキナーゼからRas–Raf–MEK–ERKへ続く段階的リン酸化カスケードである。細胞外の増殖因子や分化刺激を核内転写因子の活性化へ結び、細胞周期進行、分化、生存、形態変化を調節する。各段階が酵素反応であるため増幅できる一方、足場タンパク質と脱リン酸化酵素が選択性と時間制御を与える。
イメージ
入口の受容体が押された後、Ras、Raf、MEK、ERKが順に次のスイッチを入れる多段リレーと考える。単に信号を強くするだけでなく、短い一回の入力か持続入力かによって、細胞が「増える」「分化する」など異なる判断をする。
仕組み
増殖因子が受容体型チロシンキナーゼを二量体化・自己リン酸化すると、Grb2とSOSが結合し、RasのGDPをGTPへ交換する。Ras-GTPはRafを活性化し、RafがMEK、MEKがERKを順にリン酸化する。ERKは細胞質基質を修飾するとともに核へ移行し、ELK1、FOS、MYCなどの転写制御へ影響する。RasのGTPase活性、GAP、DUSPなどの脱リン酸化酵素、受容体内在化が信号を停止する。足場タンパク質は酵素を近接させ、同じMAPK群でも異なる入力が混線しないよう調節する。
例
EGF受容体刺激はMAPK–ERKを介して上皮細胞の増殖を促す。発生では同じ経路の強度と持続時間が細胞運命を変える。腫瘍ではRASやBRAFの活性化変異により、受容体刺激がなくても経路が持続的に作動し得る。