定義
胎盤関門は、母体の絨毛間腔血と胎児毛細血管血を隔てる交換界面であり、主に合胞体栄養膜、妊娠時期により一部残る細胞性栄養膜、基底膜、胎児毛細血管内皮からなる。O₂・CO₂は拡散、グルコースは促進拡散、アミノ酸は能動輸送、IgGはFcRnを介する経細胞輸送など、物質ごとに異なる機構で移動する。完全な遮断壁ではなく、選択的な交換臓器である。
イメージ
胎盤は母体血と胎児血を直接混ぜずに、必要な物質を選別して受け渡す税関のように働く。小さく脂溶性の物質は比較的通りやすく、栄養素は専用輸送体、IgGは受容体を使って運ばれる。一方、薬物や有害物質も性質によっては通過する。
仕組み
母体子宮らせん動脈から絨毛間腔へ流れ込んだ血液が絨毛表面を灌流し、胎児毛細血管との間で物質交換を行う。O₂とCO₂の移動は分圧差、交換面積、膜厚、母児血流に従う。GLUT1はグルコースの促進拡散を担い、システムAなどのNa⁺共輸送体はアミノ酸を濃度勾配に逆らって胎児側へ運ぶ。脂肪酸はリパーゼ、結合タンパク質、輸送体を介し、Ca²⁺と鉄は能動輸送や受容体介在性輸送によって供給される。IgGは合胞体栄養膜内の酸性小胞でFcRnへ結合し、経細胞輸送される。IgMは分子が大きく、通常はほとんど通過しない。妊娠が進むと関門は薄くなり交換面積が増える。胎盤内代謝とP糖タンパク質、BCRPなどの排出輸送体も胎児曝露を調節するが、アルコール、多くの薬物、一部の病原体を完全には遮断できない。
例
母体が高血糖になるとグルコースは胎盤を通過し、胎児のインスリン分泌を増やすが、母体インスリンそのものは通常ほとんど通過しない。妊娠後期にはIgG移行が増え、新生児へ受動免疫を与える。母体の鉄不足時には胎盤がトランスフェリン受容体を介して鉄を優先的に取り込むが、重度では胎児供給も低下する。