定義
腎髄質浸透圧勾配の消失とは、対向流系が形成した髄質間質の高浸透圧が、過剰な尿細管流量、直血管血流増加、尿素再循環低下などによって弱まる現象である。集合管の水透過性が高くても、水を間質へ引く駆動力が不足するため、最大尿浸透圧と尿濃縮能が低下する。
イメージ
腎髄質は水を引き抜くための、塩と尿素が濃いスポンジのような環境である。大量の水分が長く流れると、その塩と尿素が洗い流される。ADHが集合管の水の通り道を開いても、外側へ水を引く力が弱いため、濃い尿を作れない。
仕組み
腎外髄ではHenle係蹄太い上行脚のNKCC2によるNaCl再吸収、内髄では尿素再循環と対向流交換が浸透圧勾配を作る。直血管はヘアピン状構造と低い血流速度によって溶質を保持するが、髄質血流が増えるとNaClと尿素が体循環へ持ち去られる。長時間の水利尿ではADHが低いため、内髄集合管の尿素輸送体UT-A1・UT-A3の働きが低下し、尿素再循環が減る。高尿細管流量、ループ利尿薬、低タンパク食、閉塞解除後利尿、鎌状赤血球症による髄質障害も勾配を弱める。再びADHが上昇しても、AQP2が増えるだけでは直ちに最大濃縮能へ戻らず、髄質溶質勾配の再構築に時間を要する。
例
長時間大量に飲水した後、水制限へ切り替えても、尿濃縮が直ちに最大化しないことがある。ループ利尿薬は太い上行脚のNaCl輸送を阻害し、髄質浸透圧勾配を崩す。閉塞解除後利尿では、溶質勾配の消失と尿細管機能障害が多尿持続に関与する。