定義
メンデルランダム化解析(MR)は、受精時に概ね無作為に配分され、その後は比較的安定している遺伝的変異を、介入可能な曝露の操作変数として利用する因果推論法である。妥当な推定には、遺伝的変異が曝露と十分関連する『関連性』、曝露–転帰関係の交絡因子と独立する『独立性』、曝露以外の経路では転帰へ影響しない『除外制約』という三つの主要仮定が必要である。
イメージ
薬剤や生活習慣を長期間無作為に割り付けられない場面で、出生時に自然に配られた『曝露を少し高くする遺伝差』を長期介入の代理として比較する方法と考える。ただし、その遺伝差が別の経路から転帰へ影響すると、自然実験としての前提が崩れる。
仕組み
単一の遺伝的変異では、変異が曝露へ与える効果βGXと転帰へ与える効果βGYの比であるWald比βGY/βGXから因果効果を推定する。複数のSNPを用いる場合は逆分散加重法などを用い、別々のGWAS要約統計量を組み合わせる二標本MRも広く行われる。曝露との関連が弱い操作変数は推定の偏りと不精確性を生み、水平多面発現は除外制約を破る。MR-Egger法、加重中央値法、加重最頻値法、異質性検定、leave-one-out解析、共局在解析などを用いて結果の頑健性を検討する。集団構造化、選択交配、親の遺伝型を介する家系効果、連鎖不平衡にも注意が必要である。
例
LDLコレステロールを低下させる遺伝的変異群と冠動脈疾患リスクの関連を用いれば、長期にわたるLDL曝露の因果効果を推定できる。観察研究で関連したバイオマーカーがMRで支持されない場合は、交絡や逆因果の可能性を再検討する。ただし、生涯にわたる小さな遺伝的差と短期間の薬物介入では効果量が同じとは限らない。