定義
代謝区画化とは、代謝反応と代謝物プールを細胞質、ミトコンドリア、ペルオキシソーム、小胞体、リソソーム、核、さらに異なる組織へ分けることで、相反する反応の干渉を防ぎ、局所需要に応じた代謝の流れを作る原理である。同じ名称の代謝物でも、膜を自由に通れなければ各区画で独立した濃度を持つ。
イメージ
一つの巨大な厨房ですべての料理を同時に作るのではなく、加熱、冷蔵、下処理を別室に分け、必要な材料だけを扉と運搬役で受け渡すイメージである。部屋ごとに環境と酵素が異なるため、互いに逆向きの反応を安全に進められる。
仕組み
ミトコンドリア内膜はNADH、アセチルCoA、オキサロ酢酸などを自由に通さず、特異的な輸送体やシャトルが選択的に移送する。そのため脂肪酸β酸化、TCA回路、酸化的リン酸化は主にミトコンドリアで進み、脂肪酸合成や解糖系の多くは細胞質で進む。ペルオキシソームは極長鎖脂肪酸の初期酸化と過酸化水素処理を担い、小胞体は脂質合成、薬物代謝、Ca²⁺貯蔵を担う。複数の酵素を近接させ、中間体を次の酵素へ直接渡す基質チャネリングも微小な区画を作る。さらに肝臓、筋、脂肪、脳、腎臓は乳酸、アラニン、ケトン体、グルタミンを交換し、臓器間の区画化を形成する。輸送体の速度そのものが代謝調節点となる。
例
脂肪酸合成に必要なアセチルCoAはミトコンドリアから直接出られないため、クエン酸として細胞質へ運ばれ、ATPクエン酸リアーゼによって再びアセチルCoAとなる。逆に長鎖アシルCoAはカルニチンシャトルを通らなければ、ミトコンドリア内でβ酸化されない。