定義
空腹期伝播性収縮波は、食間期の胃と小腸におよそ90~120分ごとに現れる周期的な電気・運動活動である。静穏な第I相、不規則な活動が増える第II相、規則的で強い収縮が短時間続く第III相、次の静穏期へ移る第IV相に分けられる。上部消化管から肛門側へ移動し、非消化性残渣、剥離細胞、過剰な細菌を掃き出す役割を持つ。食事を摂ると中断され、食後運動へ切り替わる。
イメージ
食事を運ぶ通常運転とは別に、空腹時だけ作動する清掃運転と考える。静かな時間の後に強い収縮群が胃や小腸を下り、残り物を押し流す。食物が入ると清掃運転は止まり、消化・混和を行う食後運転へ変わる。
仕組み
食後の運動パターンが終了すると、腸管神経系、迷走神経、モチリンなどの相互作用によって空腹期伝播性収縮波が形成される。第III相は胃または小腸から始まり、高振幅の規則的収縮が肛門側へ伝わる。血中モチリン濃度の周期的上昇は、とくに胃由来第III相と時間的に関連し、胃・十二指腸平滑筋と腸管神経系へ作用する。食事、とくにエネルギー摂取はコレシストキニン、インスリン、GLP-1などを介してこの周期を中断し、持続的な食後混和運動へ変える。この運動は大腸の大蠕動とは異なり、主に胃・小腸の食間期にみられる。
例
夜間絶食中には第III相が複数回起こり、強い胃収縮を空腹感として感じることがある。この運動が低下すると小腸内容停滞と細菌過増殖に関与し得る。モチリン受容体作動性を持つ薬剤は、上部消化管運動を促進することがある。