定義
ミトコンドリア透過性遷移は、病的条件下で内ミトコンドリア膜の低分子に対する透過性が急激に増加する状態である。透過性遷移孔の開口によりプロトン駆動力が失われ、酸化的リン酸化が停止し、水流入と膨化、外膜破綻、細胞死シグナル放出へ進み得る。
イメージ
発電所の隔壁に大きな穴が開き、蓄えていた電位差が一気に漏れる状態と考える。電子伝達系が動いていても隔壁が保てなければATPを作れず、発電所自体が膨れて壊れる。
仕組み
ミトコンドリアCa²⁺過負荷、活性酸素、無機リン酸増加、ATP枯渇などが重なるとmPTP開口確率が上がる。内膜がH⁺や溶質へ非選択的に透過性を示すと膜電位Δψmが崩壊し、ATP synthaseは逆回転してATPを消費し得る。浸透圧性水流入で基質が膨化し、外膜透過化やcytochrome c放出が起こる。短時間の一過性開口はCa²⁺調節に関わる可能性があるが、持続開口はネクローシス・アポトーシス双方へ寄与する。
例
心筋虚血中は酸性化が孔開口を抑えるが、再灌流でpHが回復し、Ca²⁺過負荷とROS burstが重なると透過性遷移が起こり、再灌流障害を増幅する。