定義
混合ミセルは、胆汁酸、モノグリセリド、長鎖脂肪酸、コレステロール、脂溶性ビタミン、リン脂質などからなる微小な集合体である。疎水性の脂肪分解産物を小腸腔内の不攪拌水層へ可溶化し、刷子縁まで運ぶ。脂質成分は小腸上皮細胞へ取り込まれ、長鎖脂肪酸とモノグリセリドは再エステル化された後、アポB-48を含むカイロミクロンとしてリンパへ分泌される。
イメージ
脂肪は水中では大きな油滴のまま分離し、小腸上皮へ近づきにくい。胆汁酸が小さな運搬カプセルを作り、脂肪分解産物を水の層を越えて刷子縁へ届けると考えるとよい。カプセル全体が細胞へ入るのではなく、主に脂質だけが細胞へ渡され、胆汁酸は腸腔側に残って再利用される。
仕組み
胃・膵リパーゼとコリパーゼがトリグリセリドを2-モノグリセリドと遊離脂肪酸へ分解し、胆汁酸とリン脂質が乳化および混合ミセル形成を支える。混合ミセルは不攪拌水層を通って刷子縁へ近づき、脂肪酸、モノグリセリド、コレステロールなどが拡散または輸送体を介して小腸上皮細胞へ入る。滑面小胞体でトリグリセリドとコレステリルエステルへ再合成され、ミクロソームトリグリセリド転送タンパク質(MTP)がアポB-48へ脂質を付加してカイロミクロンを形成する。カイロミクロンは中心乳び管からリンパ、胸管を経て血中へ入る。短鎖・中鎖脂肪酸は比較的水溶性が高く、アルブミンと結合して門脈へ直接入りやすい。胆汁酸は主に回腸末端で再吸収される。
例
回腸切除では胆汁酸プールが減少して混合ミセル形成が不十分となり、脂肪便や脂溶性ビタミン欠乏を起こし得る。膵外分泌不全では脂肪分解の段階、胆汁うっ滞では可溶化の段階、小腸粘膜障害では細胞内取込みの段階、リンパ流障害ではカイロミクロン輸送の段階が障害される。