定義
ナンセンス依存mRNA分解(NMD)は、通常より上流で翻訳が終止するmRNAを異常と判定し、UPFタンパク質群などを介して速やかに分解する仕組みである。ナンセンス変異、フレームシフト、異常スプライシングによって生じた早期終止コドンから短縮タンパク質が作られるのを減らし、一部の正常mRNAの半減期も調節する。
イメージ
mRNAを文章に例えると、リボソームが途中で不自然な終止記号に出会ったとき、その文書全体を回収する仕組みである。終止コドンの種類だけでなく、その後方にスプライシングの痕跡が残っているか、3'非翻訳領域が不自然に長いかなどを手掛かりにする。
仕組み
スプライシング後のmRNAには、エキソン接合部の上流にエキソン接合複合体が残る。初回翻訳でリボソームが正常な終止コドンへ達すると、通常は最後のエキソン内または最後の接合複合体より下流で終止し、ポリA結合タンパク質との相互作用によって正常終止が成立する。早期終止コドンが最後のエキソン–エキソン接合部よりおおむね50〜55塩基以上上流にあると、下流の接合複合体に結合するUPF2・UPF3と、終止複合体のUPF1が連携する。UPF1のリン酸化を契機に、ポリA鎖短縮、キャップ除去、RNA切断が進む。長い3'非翻訳領域や上流開放読み枠もNMD感受性を高めることがある。
例
早期終止変異を持つmRNAがNMDで強く分解されると、変異タンパク質はほとんど作られない。一方、最終エキソン内などNMDを回避しやすい位置に同様の変異があると、短縮タンパク質が産生され、正常タンパク質の働きを妨げる場合がある。この違いは、同じナンセンス変異でも表現型が異なる理由の一つになる。