定義
細胞小器官間接触部位とは、異なる細胞小器官の膜が融合せず、通常10〜30 nm程度まで近づいて、係留タンパク質や脂質輸送タンパク質を介して物質と情報を交換する領域である。小胞輸送を介さずに脂質やCa²⁺を短距離で受け渡し、小器官の位置、分裂、代謝、ストレス応答を調節する。代表例には、小胞体–ミトコンドリア接触部、小胞体–形質膜接触部、小胞体–エンドソーム接触部がある。
イメージ
別々の建物を丸ごと動かすのではなく、壁同士を近づけて一時的な受け渡し窓口を作る仕組みと考えるとよい。二つの膜は混ざらないが、窓口を介して脂質やCa²⁺を短時間で渡せるため、小胞輸送だけでは間に合わない局所的な調節が可能になる。
仕組み
接触部位ではVAP、ORP、STIM、ミトフシンなどが二つの膜を係留する。小胞体–形質膜接触部では、小胞体内Ca²⁺の減少をSTIMが感知し、形質膜のORAIチャネルを開くことで、貯蔵作動性Ca²⁺流入が起こる。小胞体–ミトコンドリア接触部では、IP₃受容体から放出されたCa²⁺が局所的に高濃度となり、VDACとMCUを介してミトコンドリアへ流入する。適度なCa²⁺流入はATP産生を促すが、過剰になると細胞死を誘導しやすくなる。また、ホスファチジルセリン、コレステロール、ホスファチジルイノシトールなどは脂質輸送タンパク質によって膜間を移動する。接触部位は、ミトコンドリア分裂、オートファゴソーム形成、エンドソーム成熟にも関与する。
例
骨格筋では筋小胞体とT管が高度に組織化された接触構造を作り、膜の脱分極を筋小胞体からのCa²⁺放出へ結びつける。非興奮性細胞でも、小胞体–形質膜接触部にSTIMとORAIが集まり、小胞体内のCa²⁺を補充する。肝細胞では小胞体–ミトコンドリア接触の過不足が、脂質代謝、インスリン作用、酸化ストレスに影響する。