定義
pH分配仮説は、受動拡散する弱酸・弱塩基薬のうち非イオン型が脂質膜を通過しやすく、pHとpKaで決まるイオン化率が膜透過を左右するという考えである。イオントラッピングは膜を越えた薬が反対側でイオン化し、戻りにくくなって蓄積する現象である。
イメージ
中性の姿では扉を通れるが、部屋へ入って電荷を帯びると扉を戻れなくなる分子と考える。酸性側は弱塩基を、塩基性側は弱酸をイオン型として捕捉しやすい。
仕組み
Henderson–Hasselbalch関係により弱酸HAはpHがpKaより低いほど非イオン型が多く、弱塩基BH⁺はpHが高いほど非イオン型Bが多い。非イオン型が膜を平衡化した後、各側でイオン型濃度が異なるため総濃度差が生じる。弱塩基は酸性小器官・乳汁・胎児側へ、弱酸はアルカリ性尿へ捕捉されやすい。尿pH操作は一部中毒で腎排泄を変え得る。ただし多くの薬は輸送体、蛋白結合、血流、表面積、溶解性の影響も受ける。
例
弱酸性薬の一部は尿をアルカリ化するとイオン型が増え、尿細管から血中への再拡散が減って排泄が増える。酸性の胃で弱酸が非イオン化しても、吸収量は小腸の大表面積が支配することが多い。