定義
PI3K–Akt–mTOR経路は、成長因子受容体などの刺激でPI3KがPIP₂をPIP₃へ変換し、Aktを膜へ呼び寄せて活性化する経路である。Aktは糖・脂質代謝、細胞死抑制、細胞周期を調節し、mTOR複合体はアミノ酸、エネルギー、酸素、成長因子情報を統合して蛋白合成と細胞成長を制御する。
イメージ
細胞の「増えてよいか」を決める予算審査にたとえられる。成長因子という外部許可、アミノ酸という材料、ATPというエネルギーがそろうとmTORが合成へ資源を回す。欠乏時には合成を止め、オートファジーなど回収側へ切り替える。
仕組み
受容体型チロシンキナーゼや一部GPCRがPI3Kを活性化すると、内葉PIP₂からPIP₃が生じる。PHドメインを持つAktとPDK1が膜に集まり、PDK1とmTORC2がAktをリン酸化する。AktはTSC2を抑制してRheb-GTPを増やし、mTORC1を活性化する。mTORC1はS6Kと4E-BP1を介して翻訳・リボソーム生合成を促し、ULK1を抑えてオートファジーを減らす。AMPKは低エネルギー時にTSC2やRaptorを介してmTORC1を抑える。PTENはPIP₃をPIP₂へ戻す主要な負の調節因子である。
例
インスリン刺激ではAktがGLUT4移行やグリコーゲン合成を促す。腫瘍ではPIK3CA活性化、PTEN欠失、Akt過活性化により増殖・生存優位が生じる。栄養欠乏ではmTORC1低下により蛋白合成が抑えられ、オートファジーが相対的に進む。