定義
多因子遺伝は、多数の遺伝子座の小さな効果と環境要因が組み合わさって形質・疾患感受性を決める遺伝様式である。遺伝率heritabilityは、ある集団・環境・時点で観察される表現型分散のうち遺伝的分散で説明される割合で、個人の「遺伝で決まる割合」ではない。
イメージ
身長や血圧を、多数の小さなつまみと食事・運動などの環境が一緒に調整する音量と考える。集団内のばらつきをどれだけ遺伝差で説明できるかが遺伝率である。
仕組み
量的形質では多数のアレル効果が加算され、中心極限定理により連続的・近似正規分布を作る。疾患では潜在的liabilityが閾値を超えると発症する閾値modelが用いられる。広義遺伝率H²は全遺伝分散/表現型分散、狭義遺伝率h²は相加的遺伝分散/表現型分散で、選抜反応や家族相関に関係する。環境分散が小さい集団では遺伝率が高くなり得るが、環境介入が無効という意味ではない。遺伝–環境相互作用と相関も表現型へ影響する。
例
血圧の遺伝率が高い集団でも、減塩や運動で平均血圧を下げられる。家族内集積は共有遺伝子だけでなく、食習慣や社会環境も反映する。