定義
抗菌薬後効果は、細菌を抗菌薬へ一時的に曝露した後、薬剤を除去する、または濃度を最小発育阻止濃度未満へ下げても、非曝露対照と比べて再増殖開始が遅れる現象である。持続時間は抗菌薬の種類、菌種、曝露濃度、曝露時間、接種菌量、培養条件、宿主免疫によって異なる。薬物動態・薬力学の観点から投与間隔を考える際の一要素となる。
イメージ
抗菌薬が感染部位から減っても、細菌側の修復と再起動に時間がかかり、すぐには増殖を再開できない状態である。薬剤濃度が下がった瞬間に、抗菌作用が完全にゼロへ戻るわけではない。
仕組み
抗菌薬後効果の機序には、タンパク質合成阻害後のリボソーム・酵素再合成、DNA損傷修復、細胞壁構造修復、標的分子への持続的結合、代謝回復の遅れなどがある。アミノグリコシド系やフルオロキノロン系は多くのグラム陰性菌で比較的明瞭な抗菌薬後効果を示す。βラクタム系は多くのグラム陰性菌に対しては短いことが多いが、グラム陽性菌では認められるなど、薬剤と菌種の組合せで異なる。試験管内では、薬剤曝露群が一定菌数増加へ達するまでの時間Tから、非曝露対照の時間Cを引いたT − Cとして測定される。最小発育阻止濃度未満での作用や、白血球による殺菌増強も臨床上の持続効果へ影響する。
例
濃度依存性殺菌と長い抗菌薬後効果を持つ薬剤では、高い最高濃度を確保し、投与間隔を空けても再増殖が抑えられる場合がある。一方、時間依存性薬剤で抗菌薬後効果が短い菌種では、最小発育阻止濃度を超える時間を保つ頻回投与や持続投与が重要となる。