定義
タンパク質の脂質修飾とは、ミリストイル基、パルミトイル基、ファルネシル基、ゲラニルゲラニル基、GPIアンカーなどの脂質をタンパク質へ付加し、膜への結合性を与える翻訳後修飾である。付加位置、可逆性、荷電部位や相互作用分子との組合せによって、細胞内膜区画、膜の内外層、シグナルの開始と終了が精密に制御される。
イメージ
水中に溶けるタンパク質へ脂質の吸盤を付け、必要な膜へ貼り付ける仕組みと考える。吸盤が一つでは弱くても、正に帯電した領域や別の脂質修飾と組み合わせると特定の膜へ安定して留まる。可逆的な修飾を外せば、再び細胞質へ戻すこともできる。
仕組み
N-ミリストイル化では、開始メチオニン除去後のN末端グリシンへ炭素数14の脂肪酸が不可逆的に付加される。S-パルミトイル化では、システインへ炭素数16の脂肪酸がチオエステル結合し、付加酵素と脱離酵素によって可逆的に変化するため、膜への出入りを調節できる。プレニル化ではC末端CaaX配列へファルネシル基またはゲラニルゲラニル基が付加され、RasやRhoなど小型GTPaseの膜局在に必要となる。GPIアンカーは小胞体腔側でタンパク質C末端へ付加され、最終的に形質膜外層へタンパク質を提示する。脂質修飾に加えて、多塩基性領域、リン酸化、GTP結合状態、シャペロンとの結合が膜選択性を作る。
例
Rasはプレニル化に加えてパルミトイル化または多塩基性領域を使い、ゴルジ装置と形質膜の間を移動しながらMAPKシグナルを調節する。GPIアンカー型タンパク質は細胞外側へ向き、酵素、受容体補助因子、補体制御因子などとして働く。神経細胞ではパルミトイル化の可逆性がシナプスタンパク質の局在変化に利用される。