定義
呼吸ドライブと負荷–能力バランスは、呼吸中枢が必要な換気を得るために生み出す神経出力、呼吸筋が発生できる圧と持久力、気道抵抗・肺弾性・内因性PEEPなどの負荷の関係から、呼吸ポンプが換気を維持できるかを捉える考え方である。中枢からの指令が強くても、呼吸筋の出力が肺気量変化へ十分変換されなければ、換気不全と強い呼吸困難が生じる。
イメージ
呼吸中枢をアクセル、呼吸筋をエンジン、気道と肺を坂道と考える。坂が急でもエンジンが強ければ登れるが、負荷が筋力を超えると、アクセルを踏み込んでも換気が増えず、努力感だけが強くなる。
仕組み
中枢・末梢化学受容器、肺・気道の機械受容器、大脳皮質、辺縁系からの入力が延髄呼吸回路の神経出力を決める。この出力は横隔神経と肋間神経を介して吸気筋へ伝わる。呼吸筋が発生した圧は、気道抵抗、肺と胸壁の弾性収縮力、内因性PEEP、腹圧などを克服して一回換気量を作る。呼吸筋の能力は筋長、肺気量、栄養、神経筋伝達、疲労、血流に左右される。慢性閉塞性肺疾患では動的過膨張により横隔膜が短くなり、吸気開始前から内因性PEEPを超える必要がある。高い神経出力に対して胸郭運動や換気量が小さい神経筋機械的解離が生じると、空気飢餓感や努力感が強くなる。
例
重症喘息では気道抵抗と動的過膨張が負荷を増やし、強い呼吸ドライブがあっても換気を保てなくなる。神経筋疾患では気道や肺の負荷が大きくなくても呼吸筋能力が低下し、肺胞低換気を生じる。代謝性アシドーシスでは呼吸ドライブが高まり、深い換気でCO₂を排出するが、筋疲労が加わると代償が破綻する。