定義
ラッチ状態は、平滑筋でミオシン軽鎖のリン酸化が低下し、クロスブリッジの回転速度が遅くなった後も、脱リン酸化されたミオシンの一部がアクチンからゆっくりしか解離せず、張力が維持される状態である。血管、気道、消化管括約筋などが長時間の緊張を低いエネルギー消費で保つ仕組みの一つと考えられている。
イメージ
最初に強く締めた留め金を、モーターを高速で回し続けずに固定するイメージである。平滑筋は収縮開始時にはATPを使ってクロスブリッジを動かすが、張力を保つ段階では一部の結合を長く残すことで、少ない燃料で収縮を維持できる。
仕組み
細胞内Ca²⁺がカルモジュリンへ結合するとミオシン軽鎖キナーゼ(MLCK)が活性化され、ミオシン軽鎖をリン酸化する。リン酸化ミオシンはATPase活性が高まり、アクチンとのクロスブリッジサイクルを速く回して張力を発生する。刺激が弱まりCa²⁺濃度が低下すると、ミオシン軽鎖ホスファターゼ(MLCP)がミオシンを脱リン酸化する。しかしアクチンに結合中のクロスブリッジが直ちに全て外れるわけではなく、脱リン酸化後の結合はATPase活性と解離速度が低いため、単位時間あたりのATP消費が減っても張力が残る。最終的な弛緩にはクロスブリッジ解離、細胞内Ca²⁺低下、細胞骨格の再配置が必要である。
例
血管平滑筋は基礎緊張を長時間維持して血圧と臓器灌流を調節する。消化管括約筋や膀胱出口の平滑筋も、持続的な閉鎖圧を比較的少ないエネルギーで保つ必要がある。ラッチ状態は、このような持続収縮の省エネルギー性を説明する。